【2023/07/05】UNBOUND GRAVEL 2023現地レポート
偉大なる世界最大のグラベルイベントを肌で感じるために
皆さんこんにちは、iRC 営業企画室の豊川です。
今年6月に、アメリカのカンザス州で開催された世界最大級のグラベルレース「UNBOUND GRAVEL(アンバウンドグラベル)」に行ってきました。今回はそのレポートを、私から見た目線でお届けしようと思います。
iRC TIREは2023年、アンバウンドのオフィシャルスポンサーになりました。
それは、このレースが偉大で、世界中のグラベルライダーからの憧れであり、日本の江戸時代で言えばお伊勢参りのような、一度は行くべきものであるということ、そしてiRCのグラベルタイヤ「BOKEN(ボウケン)」シリーズの製品開発や、販売促進のためにこれ以上ない場所であると認識しているからです。
私は今回、BOKENを武器に戦う私たちのサポートライダー、ユーザーの姿をしっかりと目に焼き付け、日本のメンバーに伝え、そしてタイヤメーカーとしてこれから日本のグラベルシーンを創り出していくことが使命として、アメリカの地を踏みました。
※iRCは他のレースとしては、シリーズ戦として行われている「BELGIAN WAFFLE RIDE(ベルジアン・ワッフル・ライド)」のオフィシャルスポンサーにもなっています。
6月2日から始まるレースを前に、6月1日から2日間は「ALL THINGS GRAVEL EXPO」が会場で開催され、各国の名だたる自転車メーカーが出展。地元のサイクルショップもそれに合わせアンバウンド一色でした。アンバウンドをどのメーカーも重要視している意気込みを感じました。
会場は活気であふれたお祭りになっていて、とってもワクワクします。
アメリカではiRCの現地スタッフ(駐在している社員もいます)が、様々なレース会場で日本と同じようにブースを出してくれています。タイヤは日本と共通して製造販売しているものが多いですが、中にはアメリカだけのサイズ展開のものもあります。各地のマーケットに合わせて販売するものを変えていたりします。
iRCレストランが出現
スゴい!と驚いたのは、なんとスタート地点横のレストランをiRCがジャック!
昨年に続き、ライダーや観戦者でにぎわうメキシカンレストランCASA RAMOSをiRC TIRE一色に!
テーブルには「BOKEN」のランチョンマット、入口には垂れ幕、階段もタイヤ画像でラッピング、果てはスタッフは「UNBOUND×iRC」の Tシャツを着用!そして限定カクテルのマルゲリータを飲みながら参加者がグラベルへの想いを語り、巨大なタコスをおいしくいただける空間は憩いの場になっていました。
偉大なるライダー、憧れのPeter Stetina
レースを前に、iRCのサポートライダーであり、今大会の優勝候補にも挙げられているPeter Stetinaと会い、イベントに合わせ渡米されていたシクロワイアードの綾野編集長からの取材にもジョイン。明日のタイヤのチョイス、彼の体調や意気込みについて色々とヒアリングを行いました。取材中にも彼はあちこちから「Pete(ピート)!」と声を掛けられており、ライダーからの憧れであり、愛されているライダーであることを実感しました。※Peterへのインタビュー内容はシクロワイアードで近日公開予定とのことです。お楽しみに!
【Peter Stetina ピーター ステティーナ】https://www.peterstetina.com/
元トレック・セガフレード ロードライダー
2019-21 BWR ベルジアンワッフルライド サンディエゴ 優勝
2022 ユタ・ノースカロライナ 優勝
BOKENと共にトップカテゴリーのレースで勝利を重ねてきた彼はBOKENを知り尽くしたプロフェッショナル。
前日試走では、「BOKEN DOUBLECROSS TLR」フロント42C、リア38Cをチョイスするとのことでした。
Peter曰く、「アンバウンドでは、尖った小石(ネイティブアメリカンが矢じりに使用していたものと同じ)が多いので、タイヤがカットするリスクが高い。BOKEN DOUBLE CROSSは、60TPIで強く、荒れた路面や粘土質な区間にも対応できるし、本大会で2年間好成績を収められたので今年も装着する予定だよ。」と語っていました。
「ダブルクロス」は、「グラベル」×「シクロクロス」という2つのジャンルで走れるということをテーマに開発されています。
そのテーマに沿い、幅広い路面に合わせ、オールラウンドに走ることができるようになっています。
ブロックは多めに見えるのですがセンターの転がりは良く、コーナー部分のブロックの配置と、iRCの定評のあるグリップ力で、しっかりと地面を捉えます。
特に、緩く荒れた路面や、粘土質にはダブルクロスのトラクションが威力を発揮します。
iRCのグラベル「BOKEN」シリーズは、4本のパターンのタイヤがあり、それぞれ路面に応じて使うタイヤを替える仕組みになっています。
(下の図を参照)
グラベル率95%のコース
いよいよRace Dayとなり、6月2日は最長距離の350マイル(約563km)のレースが始まりました。
レースコースの中でも数カ所撮影・エイドステーションがあり、スタートを見届けた後、急いでサポートへ向かいました。
エンポリア市内をでると、オフロードの一本道がまるで地平線の彼方まで続くような景色が広がっていました。横をみると馬や牛が放牧されていて、異世界にきているような気分です。
路面は爪の大きさほどの小石や、4㎝ほどの石が転がり、砂利道が95%を占めていました。
基本的にはコーナーの少ない直線基調で、緩やかなアップダウンを繰り返しながらも突如現れる急こう配な坂を全力で駆け上がっていくライダーの姿がありました。
路面から受ける細かな振動や過酷な日差しがジリジリとライダーの体力を奪っていく環境です。
車で走っている私たちも、ときおり砂利にハンドルを取られ、思わず声を上げてしまうほど大きく揺れることがありました。
コースはストレートが多く、コーナリングをする機会があまりないため、ライダーはスリップよりも石でのパンクに細心の注意を払わなければなりませんでした。
安心して走れるタイヤが必要である、ということは日本でもアメリカでも同じであり、それを最低条件にクリアしつつ、より速く走り、グリップし、さらに刻一刻と変化する路面に対応するためにはどういうタイヤであるべきか、を深く考えさせられました。
Peterは200マイルに出走、タイヤチョイスをスリックに変更
6月3日は200マイル(約320km)、100マイル(約160km)、50マイル(約80km)3クラスのレースが始まりました。
明け方5:50~プロがスタートするため、薄暗い中、会場のエンポリア市内に4,000人以上のライダーが集結。
Peterも200マイル(約320km)のELITE MENに参戦。
Peterは前日試走からタイヤチョイスを変更。
主催者がコースに追加した泥区間の走行を考慮し、センタースリック設計のBOKEN PLUS F:700×42C、R:700×38Cを選択。
泥はけを意識した、このチョイスは正解であったと後から私たちは気づかされました。
一般ライダーは100マイル(約160km)の出走が多かったです。
私たちはBOKEN DOUBLECROSSユーザーのスナップ撮影を行いました。みなさんワクワクしながらスタートを待っていました。
会場にいた参加者へ話を伺うと、「地元でよくグラベルに乗っているよ!」とのことでした。アメリカではトレイルが点在しており、MTB、グラベルといった未舗装路で走る環境が整備されています。ふらっと走りに行ける環境は、日本にはあまりなく、オフ大好きな私はうらやましいなぁと思いました・・・。
中曽さん BOKEN DOUBLECROSS 38Cを使用
ピーナッツバターに苦戦するライダー達
昨日に引き続き見送った後、サポートブースへ向かいました。
今年はスタートしてほどなく、約10kmに及ぶ泥区間があり、タイヤとフレームの間に粘土質の泥がつまりスタックする事態が発生していました。この泥を現地では「ピーナッツバター」と呼び、どっしりと重たく、ペースト状のまとわりつくイメージができると思います。
完走を目指していたライダーも、目の前に果てしなく続く泥道を前に、マシントラブルで完走を断念する方も多数いらっしゃいいました。
これから参加をご検討される方は、カンザスの急な天候変化にも対応できるよう、泥対策に、フレームのクリアランス確保も意識したタイヤ選択することをおすすめします。泥区間を乗り越えた他の参加者も、序盤でありながらジャージ、靴、自転車、タイヤには泥の痕跡がいたるところにみられ、シクロクロッサーの様相で砂埃を上げて走り去っていきました。
泥を避けるライン取りはもちろんのこと、泥区間では自転車を担ぎあげることや、泥を落とすための棒を持参することも有効です。泥を落とすための洗車や、スコールなども発生するため、チェーンのオイル切れが起こりますのでオイル持参も必要です。
また、コースを間違えている方も見受けられました。沿道にボランティアスタッフがいる箇所もありますが、走行ルートを知らせる標識があまりありませんので、サイコンでの位置情報も重要なライフラインのように感じます。
トップ集団の先頭を走るPeterを発見
Peterも「ピーナッツバター」によって体力を削られながら、その他の区間はロードのような速さで颯爽し、地元の方の声援にも笑顔で答えていました。7人パックで走るELITE MENの選手は、目の前を通るのは一瞬でした。未舗装路のレースであるということを忘れてしまうほどです。
事前に開催者からサポートブース、撮影スポットの指定があり、移動しながら追跡。住宅街や、市街地、学校の競技場横に設置されたサポートブースでは、地元の方々やライダーの友人・家族が応援していました。国内ではTOJ(Tour Of Japan)のような雰囲気に近いのでしょうか。ピクニックのように芝生に椅子を置いて、家族連れでライダーを応援しながら、レースの様子を観戦している姿が印象的でした。学校の競技場横に指定されたサポート場所では、2$でホットドックやスナックが販売されており、観戦者の補給箇所もありました。
ライダー用の給水スポットでは日本人の中曽さんや竹村さん、山口さん(バイシクルクラブ)、綾野さん(シクロワイアード)の姿もありました。
BOKENがマディーに!アメリカの大地を走った証!タイヤが輝いてみえました。
Peterは7位
Peter Stetina選手は、トップ7人の集団で走行し、得意の上り区間では何度もアタックを繰り返し、他のライダーの体力を削る戦略でした。結果は、最終スプリント勝負に敗れ、7位となりました。
ゴール後、機材トラブルもなく、コースを完走できたのでやりきった表情でインタビューに答えていました。
Peterはこれからも、世界のグラベルレースに参戦していきますので、ぜひ応援をお願いいたします!
【ELITE MEN-200Mile】
1位 Keegan Swenson(Stans-Pivot Pro Team) 10:06:02
2位 Petr Vakoc(Canyon Northwave) 10:06:02
3位 Lachlan Morton(EF Education-EasyPost) 10:06:05
7位 Peter Stetina 10:06:10
タフさと楽しむ気持ちが必要
最後に、
UNBOUND GRAVELはレースの距離も80km~560kmとエントリーの幅が広いことも魅力です。
ライダーからは灼熱な太陽、雨と泥にも負けぬチャレンジ精神あふれるタフさと、心からグラベルを楽しむ気持ちが伝わってきました。自分の限界を超えて、自転車と対話しながら突き進んでいくパワーも感じました。また、海外レースのお祭りのような雰囲気と沿道近くにいる方々が一緒に!全力でライダーを応援する姿をみて、さらに国内のイベントを盛り上げていきたいと思いました。
今回は選手のサポート側でしたが、トップカテゴリーのレースを間近で追うことができるのも観戦の楽しみのひとつだと思います。
iRC JAPANメンバーもオフロードを愛する仲間としてBOKENライドを楽しみながらレースにも参加していきます。
今年は日本人の参加者が、昨年の7名から20名に増加しました。是非来年、参加をご検討ください!
お声をかけていただいた方、ありがとうございました。また会場でお会いしましょう。